職場の活性化はパワハラ予防から 〜一般従業員と一緒に〜
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林常喜社会保険労務士事務所 代表 林 常喜
採用活動や転職活動支援の現場に関わっていると「上司によるパワハラ」という退職理由をよく見かけます。厚生労働省の資料によると、令和5年度のパワハラに関する相談件数は60,014件と、前年比23.6%も増加しています。増加の原因は様々ですが、このような状況は企業の人材確保や生産性向上といった面からも早急に対処すべき課題です。
言うまでもなく、パワハラを行う従業員や適切な対応を怠る企業は問題です。パワハラは組織にとってデメリットしかないため、早急な改善が求められます。多くの企業が管理職向けに研修を実施していますが、相談件数の増加を見る限り、それだけでは不十分と言えるでしょう。パワハラを組織全体の問題として捉え、一般従業員を含めた全従業員が「職場のパワハラとは何か」を正しく理解することが重要です。単に「自分が嫌だと感じたらパワハラ」と捉えるのではなく、正しい共通認識を持つことが、より良い職場環境を築く上で大切なのです。 そこで重要となるのが、一般従業員向けのハラスメント研修です。パワハラの行為者にも被害者にもならないために、一般従業員の立場から自身の言動や周囲の状況を客観的に見つめ直します。
ここで、改めて「職場におけるパワハラ」の定義を確認しましょう。 法律上は、次の@〜Bをすべて満たすものとされています。 @ 優越的な関係を背景とした言動であって A 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより B 労働者の就業環境が害されるもの ただし、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しません。 簡単にまとめると「実質的に力のある従業員が力の無い従業員に対して、仕事上それほど必要ないことをして、働きにくくさせる」ことがパワハラです。
この内容を踏まえ、研修の際は「上司としてどう指導すべきか」「部下としてどう対応すればよいか」等のテーマでのディスカッション形式が有効です。これにより、従業員間で共通認識を深めるだけでなく、自身の日常的な言動への気づきを促します。もちろん、パワハラを行う従業員に問題があることは言うまでもありませんが、どのようなコミュニケーションを取ればパワハラを未然に防げるのか等を考えることも、一般従業員が自身を守るために有効です。
このような研修を実施することで、職場の人間関係が円滑になり、チームワークが向上することが期待できます。その結果、組織全体の生産性向上にもつながるかもしれません。また、働きやすい職場環境は従業員の定着率向上にも貢献します。ハラスメント対策は、一部従業員だけでなく組織全体で取り組むべき課題です。管理職だけでなく一般従業員も当事者意識を持ち、自身の日常の言動や周囲とのコミュニケーション方法について考えることが必要です。そのためにも一般従業員向け研修を取り入れてはいかがでしょうか?それが活気ある職場づくりへの第一歩となります。 以上
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