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外国人労働者の労災事故
11ネット 顔の見える士業等のネットワーク
企業保険の11ネット/リスクコンサルタント 礒村 安倫

 先日、東京へ出張に行った際に外国人の多さに改めて驚きました。円安状況も続いているので、今年はもっと海外からの観光客で賑わうことでしょう。
 しかし、観光客だけでなく、日本に溶け込んでいる外国の方々の多さにはびっくりします。現在日本に居住している外国人の人口は約350万人で、年々増加傾向にあり、その増加率は政府予想の1.5倍にもなります。先進国G7各国でも外国人居住者数は1割を超えています。特にカナダは一番多く2割を超えており、ドイツ、イギリスが1.5割以上と続いています。2019年には日本でも人手不足を補う策として特定技能の残留資格が14の分野で認められました。その多くが製造業や飲食を中心としたサービス業の範囲でしたが、今後政府はトラック運送業や鉄道、林業、木材産業へと範囲を広げていきます。
 この流れはますます激しくなることはあっても緩くなることはありません。なぜなら、日本ではこの4月から時間外労働者の上限規制が始まり、人手不足かつ一人当たりの労働時間が規制で少なくなるからです。しかも、求人をかけてもなかなか人が集まらない。そのような労働環境下では外国人労働力はますます重要視されていくでしょう。企業が外国人労働者を雇い入れるリスクの一つに労災問題があり、近年外国人労働者の労災事故は増えています。皆さんもご存知の【ハインリッヒの法則1:29:300】。300のヒヤリとした未事故を放置しておくと29の小さなケガが起こり、それを我慢していると1(死亡事故等)の重要な事故が起こり会社の存続まで危ぶまれてしまうという法則です。この300のヒヤリを外国人労働者は言葉と認識や文化の違いという壁で上手く共有できないのです。言葉では、本当に危ない状況の時、とっさに口から出る言葉は「危ない」とか「逃げろ」といった日本語でしょう。それを土壇場の状況で外国人の方がきちんと理解し判断できるか?という問題があります。
 認識では、日本では危ない状況を自国では経験することが無いから、そもそもその状況が危ないという認識すらない。という問題があります。文化でも同様に日本と日本以外の国の人だからこそ起こる違いという問題があります。こういった言葉と認識や文化の違いというものは労災事故発生率に大きく影響するでしょう。また、「外国からわざわざ日本に来ている」という責任感から、自分の仕事を守ろうとして逃げ遅れることも考えられます。
 このようなすれ違いを解消するために、日本語での安全教育は勿論、外国人労働者の母国語での安全教育も必要だと思います。そして、お互いが歩み寄るために日本の会社の人間は外国人労働者の母国語で「危ない」と「逃げろ」を覚える事が必要かも分かりません。ちなみに労災事故で後遺症を負った時の逸失利益や慰謝料は最高裁平成9年1月28日判決では日本で得るであろう賃金収入を基礎とします。日本を出国後は、出国先における収入等(日本円に換算)を基礎とするとなっています。
以上
 
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